ガクチカが「何もない」と感じる就活生へ。小さな経験を言葉にする手順
就活・新卒就活仲間との通話で、「ガクチカ、何書く?」と聞かれた。「まだ決まってなくて」と笑ってごまかして、画面を閉じる。 友人は部活の話を迷わず口にしていて、自分には、語れるような経験が見当たらない。 この記事は、ごまかさずに答えられるようになるまでの、小さな経験を拾い出して言葉にする手順をまとめたものです。 「何もない」と感じる理由、棚卸し、書き換えの例文、面接で深掘りされたときの考え方を順に書きました。
「何もない」と感じるのは、珍しいことではない
ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)が書けない、という悩みは、就活の時期になると多くの学生が抱えるものです。 まず押さえておきたいのは、「何もない」と感じることと、「本当に何もない」ことは別だという点です。 見る角度を変えると、材料が見つかることがあります。
就活の解説では、特別な実績よりも、どう考えてどう動いたかに目を向ける考え方が紹介されていることがあります。 ただし、企業ごとに見る点は違うので、一般的な考え方として読んでください。
「何もない」の中身は、たいてい三つのどれか
書けない原因が分かると、対処も変わります。自分がどれに近いか、考えてみてください。
- 基準が高すぎる。全国大会、代表、売上の達成、長期留学といった「大きな話」だけがガクチカだと思っていて、自分の経験を最初から候補から外している状態です。
- 当たり前すぎて、経験だと思っていない。毎週のアルバイトや、授業のグループ課題、続けている習慣など、日常に溶けた経験は、本人には「特別なことではない」と映ります。
- 経験はあるが、言葉にする型を知らない。何をしたかは覚えているのに、どこを切り取ればいいのか分からない状態です。これは経験の不足ではなく、整理の手順の不足です。
三つとも、経験を増やす話ではなく、いまある経験の見方と取り出し方を変える話です。
手順1: 15分で、小さな経験を拾い出す
タイマーを15分にセットして、次の四つの場所について、思いつく出来事を断片のまま書き出します。 良し悪しは判断せず、「こんなの話にならない」と思ったものも残します。
- アルバイト・インターン。任された仕事、決まった曜日や時間帯の担当、新人に教えた経験など。
- 授業・ゼミ・資格の勉強。グループ課題での役割、レポートや発表の準備、独学で続けたこと。
- サークル・部活・地域や学内の活動。役職がなくても、準備や片付け、連絡の担当などは材料になります。
- 日常の工夫・習慣。自炊、通学時間の使い方、家族の手伝い、趣味を続けるための仕組みなど。
書き出しに詰まったら、次の四つの問いを順に当ててみてください。
- 人から「ありがとう」「助かった」と言われたことはあるか。
- 誰にも頼まれていないのに、自分から変えたことはあるか。
- うまくいかなくて、やり方を変えたことはあるか。
- 三か月以上、なんとなく続けていることはあるか。
思い出せないときは、家族や友人に「私が頑張っていたことって何だと思う?」と聞いてみる方法もあります。
手順2: 一つだけ選ぶ
五つ前後の断片が出たら、そこから一つ選びます。大きさで選ばず、次の二つで見てください。
- 自分が判断して動いた場面があるか。「言われたとおりにやった」だけの話より、「自分でこうしてみた」がある話のほうが、言葉にしやすくなります。
- 場面を具体的に思い出せるか。いつ、どこで、誰と、が浮かぶ経験は、深掘りされても答えやすくなります。
手順3: 「状況→自分の動き→工夫→学び」の型に入れる
選んだ経験を、次の四つの欄に一、二文ずつ書き込みます。
- 状況。どんな場で、何が起きていた(または気になっていた)のか。
- 自分の動き。そのとき、自分が何をしたのか。「みんなで」ではなく「私は」で書きます。
- 工夫。やり方を変えた点、うまくいかなかったときの対応、なぜそうしたのかの理由。
- 学び。その経験で気づいたことと、いまの自分の行動にどうつながっているか。
いちばん書き切れないのが「工夫」の欄です。ここが空いているなら、「ほかのやり方もあったのに、なぜそれを選んだのか」を自分に聞いてみます。 答えが一言でも出れば、話せる形に近づいています。結果や数字は、あるものだけ添えれば十分です。
悪い例と良い例の書き換え(例文です)
次に示すのは、型の使い方を見せるための例文です。実在の人物の体験談ではなく、そのままESに写すものでもありません。
書き換え前の例(型に入れる前)
- 「私は飲食店のアルバイトで、お客様のために一生懸命働きました。大変なこともありましたが、最後までやり遂げ、責任感が身につきました。この経験を社会人になっても活かしたいです。」
何をしたのかが見えません。「一生懸命」「責任感」は誰が書いても成り立つ言葉で、この人ならではの話になっていません。
書き換え後の例(型に入れたもの)
- 「週三回、夕方の時間帯に入る飲食店のアルバイトで、注文の聞き間違いによるやり直しが、ときどき起きていることが気になっていました。 そこで、自分が受けた注文は復唱してから厨房に伝えることを、自分から始めました。 混む時間帯は復唱が長くなるため、品数が多いときは略称でメモを取り、区切って確認するように変えました。 この経験から、確認の一手間は、あとで直す手間を減らすためのものだと気づきました。いまは、何かを頼まれたときに、最初に条件を確認する習慣がついています。」
変わったのは、経験の大きさではありません。「何が気になったか」「自分は何をしたか」「どう変えたか」が入ったことで、同じアルバイトの話に、その人の考え方が見えてきます。 (この例文の中の状況や回数は、型の説明のために作った架空のものです。自分の文章に使うときは、自分が実際に経験した事実だけで書いてください。)
面接で深掘りされたときの考え方
面接では、書いた内容について「なぜそうしたの?」「ほかの人はどうしていた?」「うまくいかなかったことは?」と聞かれることがあります。 こうした質問は、話を疑うためというより、考え方を知るためのものと受け取ってかまいません。
- 答えをその場で作らない。当時の自分が何を考えていたかを、思い出して話します。うまい理由づけより、実際の理由のほうが、話に一貫性が出ます。
- 覚えていないことは、覚えていないと言う。細部を埋めようとして作り話になるより、「そこまでは覚えていませんが、このように判断しました」と言うほうが誠実です。
- うまくいかなかった話も、素材にする。失敗や遠回りの場面は、「どう対応したか」を話せるなら、むしろ具体的な材料になります。
準備としては、型に入れた四つの欄それぞれに「なぜ?」を二回ずつ自分に問い、声に出して答える練習が役に立ちます。
やってはいけないこと
- 話を盛る。やっていない役割や、事実と違う数字を足すことです。深掘りされたときに答えが崩れやすいうえ、選考上の信頼にも関わります。
- 他人の経験を借りる。友人の話や、ネットで見つけた例文をそのまま自分の話にすることです。細部を聞かれたとき、自分の言葉で答えられません。例文は、構成を学ぶためだけに使います。
- 学びを立派にしすぎる。小さな経験に「リーダーシップ」などの大きな言葉を無理に貼ると、中身と釣り合わなくなります。
一人で進まないときの相談先
棚卸しや型への当てはめが進まないときは、人の力を借りる方法があります。 大学のキャリアセンターでは、ESの添削や面接練習に付き合ってもらえる場合があります。 ハローワークなどの公的な窓口にも、新卒や若い世代向けの相談を扱っているところがあります。内容や対象は窓口ごとに違うので、事前に確認してください。
民間の就活サービスを使う選択肢もありますが、内容や対象条件は事業者ごとに異なるため、公式の情報を確かめてから決めてください。 言葉が「それっぽく」なってしまうときの直し方は ESも面接も「それっぽい言葉」になってしまうとき|自分の言葉に戻す手順(広告を含む記事です)に、 書き出しの考え方は 自己分析で何を書き出せばいいかの記事(転職向けの記事ですが、書き出し方の考え方は就活にも使えます)に整理しています。 面接のあとに振り返りたいときは 面接に落ちた日の夜にやること。次の面接に持ち越す振り返りの仕方も参考になります。
なお、書けないことが重なって、眠れない、食欲がないといった状態が続くときは、就活の準備を止めて構いません。 そんなときは、大学の学生相談室、地域の相談窓口、医療機関といった専門家の力を借りてください。
ガクチカを言葉にするチェックリスト
- ☐ 15分で、四つの場所(アルバイト・授業・サークル・日常)から断片を書き出した
- ☐ 「大きさ」ではなく、自分が動いた場面で、一つ選んだ
- ☐ 「状況→自分の動き→工夫→学び」の四つの欄を、それぞれ一、二文で埋めた
- ☐ 各欄に「なぜ?」を二回ずつ問い、声に出して答えてみた
- ☐ 盛った部分や、借りた部分が無いか読み返した
まとめ
「何もない」の多くは、経験がないのではなく、見る基準が高いか、取り出す型を知らないだけです。小さな経験を15分で拾い、動いた場面がある一つを選び、状況・動き・工夫・学びの四つに入れる。 次に「ガクチカ、何書く?」と聞かれたとき、笑ってごまかさずに、一つの場面から話し始められる。面接で「なぜ?」と聞かれても、当時の自分の考えを思い出しながら話せる。 その入口には、もう立てているのかもしれません。 いまの時点で、人から「助かった」と言われた場面を、一つ思い出せますか。
本記事は一般的な情報提供を目的とした編集部独自のコンテンツです。ESや面接で何を評価するかは企業ごとに異なります。 個別の添削や選考に関する判断は、大学のキャリアセンターや公的な就職支援の窓口などの専門家にご確認ください。 心身の不調がある場合は、学生相談室や医療機関などにご相談ください。 選考や就職活動の結果について、特定の結果を保証するものではありません。