転職して最初の数か月の有給休暇。付与される時期を、内定のうちに書面と就業規則で確かめる

更新日: 2026年10月30日

条件・お金

こんな朝を思い浮かべてみてください。入社して二か月目、体温計の数字が三十八度を超えている。上司に送る連絡の文面を考えるより先に、頭に浮かぶのは「有給って、もう使えるんだっけ」。前の会社なら、迷わず使えた。いまの会社の就業規則は、まだ開いていない。入社の日に受け取った書類のどこに書いてあったのか、思い出せないまま、布団の中でスマートフォンを握っている。 その答えは、入社の前に手元へ届く書類に、もう載っているのかもしれません。

分かれ道マップ

いま、いちばん近いのはどれですか

近い状況を開くと、先に読む場所が出ます。

入社直後の有給休暇で、引っかかっているのは、どれに近いですか

  • 転職したあと、年次有給休暇がいつから使えるのか知りたい
    結論

    労働基準法第39条が定める付与の要件は、雇入れの日から6か月間継続勤務していることと、その間の全労働日の8割以上出勤していることです。入社から6か月の間は、第39条が定める年次有給休暇はまだ発生していない、と読めます(編集部の読み)。

    確認1 法律が決めている原則
  • 「入社した日から有給がある」会社もあると聞いた
    結論

    厚生労働省の資料には、入社と同時など、法定の基準日より前に年次有給休暇を付与する場合の取扱いが載っています。いつ付与されるかは、会社の定めで変わりえます。

    確認2 法律より早く付与する会社
  • 内定のうちに、どの書類を見れば分かるのか
    結論

    厚生労働省のモデル労働条件通知書には、年次有給休暇の欄があります。会社が設けた休暇は就業規則に定めることが必要、とモデル就業規則の解説にあります。

    確認3 通知書・就業規則・求人票
  • 付与される前に、休む必要が出そうだ
    結論

    付与の前の期間の休み方を定めた公的な基準は、取得した資料では確認できていません。会社ごとの定めを、三つの点に分けて聞いておく方法を載せました。

    確認4 付与される前の休みの聞き方
  • 前の会社の勤続年数や、残っている有給は引き継がれるのか
    結論

    資料は、継続勤務を事業場での在籍期間としています。転職のケースを直接書いた箇所は見つけられませんでした。試用期間の扱いも、確認できていません。

    確認5 前の会社の勤続と試用期間
  • 有給が使えるはずなのに、断られた。どこに相談できるか
    結論

    厚生労働省のリーフレットには、時季変更権、不利益な取扱いの禁止、「有休はない」と言われた場合の考え方が載っています。相談は、各都道府県労働局などにある総合労働相談コーナーで、予約不要・無料です。専門の相談員が不在の日時もあり、念のため事前に連絡することが勧められています。

    確認6 付与されたあとのこと・窓口

確認1 法律が決めている原則。6か月の継続勤務と、8割の出勤

労働基準法第39条第1項は、使用者は、雇入れの日から起算して6箇月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、または分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない、と定めています(厚生労働省の法令データで条文を確認しました)。厚生労働省のリーフレット「年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています」は、業種や業態にかかわらず、正社員、パートタイム労働者などの区分なく、一定の要件を満たした全ての労働者が対象、と書いています。要件は二つ、「雇入れの日から6か月継続勤務」と「全労働日の8割以上出勤」です。別の資料(「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」、2023年2月)には、対象に管理監督者や有期雇用労働者も含まれる、とあります。

日数は、リーフレットの表によると、通常の労働者の場合、最初の付与が10日で、継続勤務年数が1.5年で11日、2.5年で12日と増え、6.5年以上で20日です。週の所定労働日数が4日以下で、週の所定労働時間が30時間未満の労働者は、所定労働日数に応じて少なくなります。最初の付与は、週4日(年の所定労働日数が169日〜216日)で7日、週1日(48日〜72日)で1日など、リーフレットの表のとおりです。

半年後がいつになるかは、リーフレットの例が分かりやすく載せています。4月1日に入社した場合、10日付与される基準日は10月1日です。次の表は、この数え方と同じように、ほかの入社日を当てはめたものです。

表は横にスクロールできます →

入社日と、法定どおりの場合に最初の付与がされる日(全労働日の8割以上出勤した場合。2026年10月30日に作成)
入社日 最初の付与がされる日 この表の出どころ
4月1日 10月1日(10日付与) リーフレットに載っている例
12月1日 翌年6月1日 編集部が、上の例と同じ数え方で当てはめた日付
1月15日 7月15日 編集部が、上の例と同じ数え方で当てはめた日付

出勤率の数え方も、資料に書かれています。リーフレットによると、業務上のけがや病気で休んでいる期間、法律上の育児休業や介護休業を取得した期間などは、出勤したものとして取り扱う必要があります。会社都合の休業期間などは、原則として、全労働日から除外する必要があります。モデル就業規則の解説には、このほかに、産前産後の休業期間と、年次有給休暇を取得した期間も、出勤したものとして取り扱う期間に挙げられています。「全労働日」の細かな数え方は、取得した資料では確認できていないため、この記事では扱いません。

ここから、編集部が読んだことが一つあります。条文は、6か月の継続勤務を要件として、有給休暇を与える義務を定めています。この裏返しで、入社から6か月の間は、第39条が定める年次有給休暇がまだ発生していない、と読めます(編集部の読み)。ただし、これは同条が定める最低限の時期の話です。会社がこれより早く付与することは、次の確認2にあります。

確認2 法律より早く付与する会社があること

「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」(2023年2月)には、「新入社員に入社と同時に年次有給休暇を付与する場合など、法定の基準日より前に年次有給休暇を10日以上付与した場合」の取扱いを説明する頁があります。法定の基準日(雇入れの日から6か月後)より前に10日以上付与した場合は、その日から1年以内に、5日の年次有給休暇を取得させなければならない、とあります。例として、4月1日の入社と同時に10日付与する図が載っています。同じ資料のQ&Aにも、4月1日に入社した新入社員に、入社日に10日以上の年次有給休暇を付与し、以降は年度単位で管理している場合は、4月1日が基準日になる、という問いと答えがあります。

もう一つ、モデル就業規則の解説に、年次有給休暇の基準日を、個々の労働者の採用日に関係なく統一して定めることもできる、とあります。この場合、勤務期間の切捨ては認められず、常に切り上げなければならない、とも書かれています。例は、基準日を4月1日に統一した場合の、1月1日採用の労働者です。3か月間継続勤務した後の4月1日の時点で、法定の場合よりも3か月間前倒しして、初年度の年次有給休暇を付与しなければならない、としています。

これらの資料から、編集部が読んだのは次の点です。入社と同時に付与する運用や、入社から数か月で付与する運用が、資料の上でありうること。そして、いつ付与されるかは、会社が就業規則などで定めるため、法定の「6か月」だけでは決まらないことです(編集部の読み)。求人票や面接で「有給は入社時から」「半年後から」と聞いた場合も、書面で同じことが書かれているかを見ます。どれくらいの会社が前倒しで付与しているかは、取得した資料では確認できていません。

確認3 内定のうちに見られる場所。通知書・就業規則・求人票

労働条件通知書: 厚生労働省のパンフレット「2024年4月からの労働条件明示のルール変更 備えは大丈夫ですか?」(巻末に「2024年9月」の記載)によると、労働条件を明示する書面の様式は自由で、厚生労働省がモデル様式を公開しています。その巻末のモデル労働条件通知書の「休暇」の欄には、次の項目があります。

二つ目の項目が、今回いちばん関係する欄です。会社が使う通知書がこのモデルと同じ形なら、入社前に、6か月以内に付与される年次有給休暇の有無と、何か月経過で何日付与されるかが読める、と考えられます(編集部の読み)。ただし、様式は自由なので、この欄がない通知書もありえます。欄が見当たらないときは、聞く点になります。

就業規則: モデル就業規則の第5章の冒頭に、年次有給休暇などの法定の休暇だけでなく、会社で設けている休暇については就業規則に定めることが必要、とあります。モデル通知書の末尾には、「就業規則を確認できる場所や方法」を書く欄もあります。入社前に全文を見られるかは会社によるため、見たい旨を、人事の担当者やエージェントの担当者に聞く形になります。

求人票: 厚生労働省のリーフレット「求人票の見方」(ハローワークの求人票向け)を読みましたが、年次有給休暇の記載位置は見つけられませんでした。民間の求人サイトで、年次有給休暇がどの欄にどう書かれるかも、確認できていません。求人票に書かれていなくても、通知書と就業規則で確かめる、という順番になります。

確認4 付与される前に休む必要が出たときのために、聞いておく三つの点

取得した資料では、付与される前の期間に、休む場合の扱いを定めた規定は確認できませんでした。そのため、会社ごとの定めを、次の三つに分けて確かめる、という整理にしました。聞き方は編集部の整理です。

  1. 通知書の「継続勤務6か月以内の年次有給休暇」は、有か無か。有なら、何か月経過で何日か。
  2. 年次有給休暇とは別に、会社が定めた休暇(通知書のモデルでいう「その他の休暇」)はあるか。あるなら、有給か無給か。モデル就業規則には、慶弔休暇(第26条)と病気休暇(第27条)の例が載っています。解説は、この二つの休暇は、労働基準法上、定めることが義務づけられているものではない、としています。会社によって、あるかないか、何日かが違いえます。
  3. 休んだ日の賃金は、どう扱われるか(就業規則の賃金の項や、通知書の賃金の欄で確かめる点です)。

入社の前から決まっている予定がある人は、入社日を決める段階で伝える材料にもなります。家族の用事や、役所の手続きの日などです。健康についての事情を、内定後に会社へ伝えるかどうかは、本人が決めることです。入社日の調整の考え方は内定後の条件確認・入社日調整で気をつけたいことに、退職日と入社日のあいだの手続きは退職日と入社日のあいだが空くとき。健康保険・年金・雇用保険の手続きを、期限つきで整理するにあります。体調の判断は、この記事では扱いません。つらいときは、医療機関に相談してください。

エージェントを通して応募するなら、通知書の休暇欄の確認を、担当者に頼むこともできます。担当者を選ぶ段階なら、タイプ別・エージェント選び方診断(広告を含むページです)が、比べるときの入口になります。

確認5 前の会社の勤続年数と、試用期間の扱い

リーフレット「年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています」は、「継続勤務」を、事業場における在籍期間を意味し、勤務の実態に即して実質的に判断される、と書いています。例として、定年退職者を嘱託社員として再雇用した場合は、継続勤務として扱う必要がある、とあります。モデル就業規則の解説にも、パートタイム労働者であった人を正社員に切り替えた場合など、実質的に労働関係が継続しているときは、継続年数に通算される、とあります。

ここまでが、資料に書かれていることです。ここから先は、資料に書かれていない部分で、編集部の読みです。別の会社に転職した場合は、新しい会社での在籍が、入社日から始まる、と読めます(編集部の読み)。グループ会社への移籍、出向、事業の承継などは、取得した資料では確認できていません。前の会社で何年勤めたかが、新しい会社の付与日数に影響するかは、通知書や就業規則で確かめる点です。前の会社に残っている有給の使い方は、有給消化の期間と退職日、引き継ぎの調整方法にあります。

試用期間: 取得した資料の中に、試用期間を継続勤務に含めるかを直接書いた箇所は、見つけられませんでした。継続勤務が在籍期間とされていることから、試用期間中も在籍にあたると読めますが、確認はできていません(編集部の読み)。試用期間のある求人では、通知書や就業規則で、年次有給休暇の数え始めがいつかを確かめます。試用期間そのものの見方は内定後の条件確認・入社日調整で気をつけたいことにあります。

確認6 付与されたあとのことと、困ったときの窓口

付与されたあとのルールで、リーフレットに載っている点を挙げます。

リーフレットの末尾には、不明な点は、最寄りの都道府県労働局、労働基準監督署に問い合わせるように、とあります。厚生労働省の「総合労働相談コーナーのご案内」によると、総合労働相談コーナーは、解雇、雇止め、配置転換、賃金の引下げ、募集・採用など、あらゆる分野の労働問題を対象にしています。専門の相談員が面談か電話で対応し、予約不要・無料です。土・日・祝日・年末年始(12月29日から1月3日)は閉庁しています。各コーナーの注記には、専門の相談員が不在の日時もあり、予約制ではないが念のため事前に連絡することが勧められている、とあります。電話番号と開庁時間は変わることがあるため、書き写さず、同省のページで確かめてください。

あなたの会社の対応が、資料のとおりかどうかや、どう動くのがよいかは、この記事からは判断できません。窓口か、社会保険労務士・弁護士などの専門家に確かめる場面です。

今週のチェックリスト

ここは編集部の整理で、効果を確かめた手順ではありません。

まとめ

入社した日、年次有給休暇が付与される日、その間の休みの扱い。この三つを、入社の前に一枚のメモへ書き出しておくと、入社後の最初の数か月について、見通しを立てやすくなります。労働基準法第39条が定める付与の要件は、6か月の継続勤務と、全労働日の8割以上の出勤です。それより前の扱いは、書かれていれば会社の通知書や就業規則にあります。見当たらないときは、聞く点になります。 冒頭のような朝が来たとき、体温計を置いて最初に開くのが通知書の休暇欄だと分かっている。何が使えて何が使えないかを、書類の山から探し回らずに済む。そんな備えを、手元の書類から作れるかもしれません。 次の入社日までに、あなたがいちばん先に開いておきたい書類は、どれですか。

本記事は一般的な情報提供を目的とした編集部独自のコンテンツです。法律や制度、行政の運用は改正されることがあります。個別の労働契約や就業規則に基づく年次有給休暇の付与時期や日数、休暇の取扱いが適切かどうか、どの窓口が適切かは、都道府県労働局・総合労働相談コーナーの窓口、または社会保険労務士・弁護士などの専門家にご確認ください。体調についての判断は、医療機関にご相談ください。 応募や面接、内定の結果について、特定の結果を保証するものではありません。 タイプ別・エージェント選び方診断は、広告を含むページです。