冬のボーナスをもらってから辞めたいとき、10月のうちに確認したい4つのこと

更新日: 2026年10月11日

転職活動の進め方

給与明細のアプリを開いて、去年の冬の賞与の欄を見る。その金額の横に、転職先の入社日を1か月ずらした場合の数字を並べて、電卓の画面を何度も消している。 「ボーナス前に辞めるともらえなくなる」とは聞くけれど、それが自分の会社でも本当なのか、誰にも聞けないまま、10月の半ばになった。 この記事は、退職日を決める前に、自分の会社の規程のどこを読めば答えが出るのかを、厚生労働省の資料にもとづいて整理したものです。

分かれ道マップ

いま、どの段階にいますか

状況を開くと、この記事で先に読む場所が出ます。

いまの状況は、どれに近いですか

  • 転職活動中で、まだ内定はない
    結論

    退職の話をする前に、自分で規程を読むだけの段階です。自分で規程を読むだけなら、会社に何かを申し出る必要はありません。支給日の在籍条件と、探し方から確認します。

    確認1 支給日の在籍 確認4 規程の探し方
  • 内定が出そうで、入社日を聞かれそうだ
    結論

    入社日は転職先との相談で決まるので、現職側の確認を先に済ませておくと、聞かれたときに事実で答えやすくなります。退職日の候補を並べる節も使えます。

    確認3 転職先の入社日 退職日の候補を並べる
  • 上司に退職を伝えるタイミングで迷っている
    結論

    「伝える日」が賞与の扱いに関わる規程を置く会社があります。伝える前に、退職予定者についての定めがあるかを確認します。

    確認2 退職予定者の扱い 確認4 規程の探し方
  • すでに退職の意思を伝えた
    結論

    賞与の扱いは、規程の文面と、その規程が周知されているかで変わります。支給の扱いを文面で確認し、納得できないときの相談先も知っておきます。

    確認2 退職予定者の扱い 困ったときの相談先

まず前提。賞与は「会社ごとの決まり」で決まる部分が大きい

厚生労働省のモデル就業規則(第6章 賃金)の解説では、賞与は労働基準法その他の法律で設けることが義務付けられているものではない、とされています。 そのうえで、賞与を支給するなら、就業規則に支給対象時期、算定の基準、査定期間、支払方法などを明確にしておくことが必要だ、と説明されています。 つまり、いつ、誰に、いくら出るのかは、法律で一律に決まっているのではなく、自分の会社の就業規則や賃金規程の文面で決まる部分が大きいのです。

ネットには「査定期間は働いたのだからもらえるはず」という話も、「支給日前に辞めたらもらえない」という話もあります。 どちらが当てはまるかは、自分の会社の文面で決まります。

確認1 支給日に在籍していることが条件か

モデル就業規則の解説には、賞与の支給対象者を、一定の日(例として、6月1日や12月1日、または賞与支給日)に在籍した者とする規定を置けば、 期間の途中で退職してその日にいない人には支給しないとすることも可能だ、と書かれています。これが「支給日在籍要件」と呼ばれる取り扱いです。

厚生労働省が公開している個別労働紛争のあっせん事例の解説でも、この要件を定めた就業規則を合理性があるとして適法とした最高裁判決(大和銀行事件、1982年)と、 規程の文面ではなく慣行としての要件も適法とした最高裁判決(京都新聞社事件、1985年)が挙げられています。 算定の対象期間をすべて働いていても、支給日にいなければ支給されない取り扱いが、裁判例では適法とされることが多い、という整理です(ここでは、自分から退職する場合を想定した整理です。会社都合の退職などは別の判断がありうるため、この記事では扱いません)。 なお、同じ解説には、「支給日」とは賞与の支給が予定されている日であり、実際の支給が予定日より遅れた場合は、予定日にいた人はその後に退職しても請求権があるとした判決も紹介されています。

自分の会社の文面で、次の3つを見ます。

確認2 「退職予定」を伝えたあとの扱いに定めがあるか

在籍の条件とは別に、「支給日までに退職を予定している者には支給しない」といった定めを置く会社もあります。 厚生労働省のあっせん事例集には、この定めをめぐる事例が載っています。

事例の概要はこうです。従業員が12月1日に、翌年1月15日付の自己都合退職の届を出し、引き継ぎをして、残っていた有給休暇を取っているあいだに、12月20日の冬季賞与の支給日が来ました。 会社は、「支給日において既に退職している者または退職を予定している者には支給しない」という規程を理由に、支給しませんでした。 ところが、その規程が従業員に実質的に周知されていなかったことが争点になり、あっせん(第三者が入る話し合い)で、会社が解決金を支払う形で解決した、とされています。会社側は勤務成績なども理由に挙げており、あっせん員は、他の労働者に支払った賞与から一定割合を減らした額に相当する額で解決することを提案した、と記録されています。減らす割合は事例集では示されていませんが、満額が支給された事例ではありません。

解説にある整理を、要点だけ並べます。

これは特定の会社の1件で、あなたの会社の結論を示すものではありません。持ち帰れる確認事項は二つです。 退職を「伝えた日」が賞与の扱いに関わる定めがあるか。その定めを、あなたが読める状態になっているか。 定めが見当たらなくても、査定の運用は会社ごとに違い、文面からは分からない部分が残ります。

確認3 転職先の入社日と、転職先での最初の賞与

現職の確認と同じ重さで、転職先の事情があります。入社日は、転職先との相談で決まるものです。 「現職の賞与の支給日のあとに入社したい」という希望が通るかは、転職先の採用計画や配属の都合しだいで、約束できません。

もう一つは、転職先での最初の賞与です。入社してすぐの算定期間に在籍が短い場合に、対象になるのか、減額されるのかは会社ごとに違います。 これは転職先の就業規則や労働条件通知書、内定後の条件確認で聞く事柄です。進め方は 内定後の条件確認・入社日調整で気をつけたいことにまとめています。

入社可能な時期を聞かれたら、現職の退職の手続きと引き継ぎに必要な期間をもとにした見込みを、事実のとおりに伝えます。 賞与の支給日が理由の一つなら、それも含めて話せますが、入社日が動くかどうかは転職先しだいです。 有給休暇を含めた段取りは 有給消化と退職スケジュール、どう調整する?で触れています。 エージェントを使っているなら、事情を担当者に伝えて、入社日の調整を相談することもできます(対応はサービスごとに異なります)。 どのタイプのエージェントが自分の状況に近いかは、 タイプ別・エージェント選び方診断(広告を含むページです)で確かめられます。

確認4 規程を、どこで、どうやって読むか

会社には、就業規則を働く人に知らせる義務があり、方法は、見やすい場所への掲示や備え付け、書面の交付、電子データを常に確認できるようにすること、のいずれかとされています (厚生労働省の事例集が引いている労働基準法第106条と、同法施行規則第52条の2)。自分の会社の就業規則を読むのは、特別な行動ではありません。 賃金のルールは、就業規則の本体とは別の「賃金規程」になっている会社もあります。

表は横にスクロールできます →

自分の会社の規程を確認するメモ(見つけた内容は自分で書き込みます)
確認すること 探す言葉の例 見つからないとき
賞与の支給条件 賞与、算定対象期間、支給日 賃金規程、雇用契約書、入社時の労働条件の書類を探す
在籍の条件 在籍、基準日、支給日に在職 人事に「賞与の対象者の条件を確認したい」と聞く
退職予定者の扱い 退職を予定、退職予定者 見当たらなければ「定めは見つからなかった」と記録する
退職の手続き 退職、申し出、何日前 就業規則の「退職」の章を探す

探す順は、社内ポータルや共有フォルダ、入社時に渡された書類、最後に総務や人事への依頼です。自分で探すだけなら、会社に何かを申し出る必要はありません。ただし、人事や総務に聞くときは、聞き方によって退職を考えていると受け取られることがあります。聞くかどうかは、その点を考えたうえで決めてください。 規程が見つからない、見せてもらえない場合は、次の相談先を使います。

退職日の候補を並べて、比べる

確認がそろったら、退職日の候補を2〜3個並べて、賞与だけでなく、ほかの要素も同じ表に入れます。

賞与の金額が大きく見えても、入社日がずれることで変わるものは、並べて初めて見えます。どれを重くみるかは、あなたが決めることです。 在職中の進め方の全体は 在職中の転職活動、どう進める?スケジュールの立て方の基本に整理しています。

困ったときの相談先

厚生労働省の案内では、総合労働相談コーナーが、各都道府県の労働局や労働基準監督署内などに設けられており、職場のトラブルの相談を受け付け、解決のための情報提供を行っています。 予約不要で無料で、労働者・事業主のどちらからの相談も、学生や就活生からの相談も受け付けている、とされています。賞与の件が相談の対象に含まれるかは、確認できていないので、窓口に問い合わせてください。 個別の判断が必要なときは、社会保険労務士や弁護士などの専門家にも確認してください。

今週のチェックリスト

まとめ

冬の賞与をもらってから辞めるかどうかは、支給日の在籍、退職予定者の扱い、転職先の入社日、規程の探し方の4点を、自分の会社の文面で確かめるところから始まります。 確かめたあとは、賞与だけでなく、入社日や引き継ぎ、自分の体力も同じ表に並べて決めます。 電卓の画面を消しては入れ直していた夜が、「この条文を、この日までに読む」というメモに変わっていたら、退職の話を切り出す日の落ち着きが、少し違うかもしれません。 あなたが退職日を決めるとき、いちばん譲れないのは、金額ですか。それとも、次の職場での最初の日ですか。

本記事は一般的な情報提供を目的とした編集部独自のコンテンツです。就業規則や賃金規程の解釈、賞与の支払いに関する個別の判断は、 社会保険労務士、弁護士、労働局などの公的な相談窓口にご確認ください。 掲載している裁判例は、厚生労働省の資料に記載された内容の要約で、個別の事案の結論を示すものではありません。 転職の結果や入社日の調整について、特定の結果を保証するものではありません。 タイプ別・エージェント選び方診断は、広告を含むページです。