フリーランスから正社員に戻るのは「失敗」?戻る判断の考え方
フリーランス・独立夜、求人サイトで「正社員」の条件にチェックを入れて検索し、結果が表示されたところで、そっとタブを閉じる。 独立するときに「応援してる」と言ってくれた人の顔が浮かんで、戻りたいと思うこと自体が、負けを認めることのように感じられる。 この記事では「失敗かどうか」という問いをいったん脇に置き、戻りたい理由を仕分けて、 戻るかどうかを自分の言葉で決めるための考え方を整理しました。
「戻る=失敗」という見方は、どこから来るのか
独立を決めたとき、家族や元同僚に「やってみます」と伝えた人もいるかもしれません。 自分にも「続けること」を約束したような感覚が残っていると、戻ることが約束を破ることのように見えてしまいます。
ただ、独立はそれ自体がゴールだったわけではなく、やりたい仕事に近づくため、時間の使い方を変えるため、収入の形を変えるためなど、 何かの目的のための働き方だったのではないでしょうか。 手段が今の自分に合っているかを見直すのは、失敗の判定ではなく、点検にあたります。 暮らしの状況も、仕事の中身も、数年のうちに変わります。変わったのに働き方だけを変えないほうが、無理が出ることもあります。
検索すると、民間のメディアには「正社員に戻ることは失敗とは限らず、お金や社会保険、スキルの伸びなどを見て判断する」という趣旨の記事が並んでいます。 考え方の一つとして参考になりますが、各媒体の見解であり、一次統計にもとづく結論ではありません。 ここから先は、記事の結論を借りるのではなく、あなた自身の状況に当てはめて考えるための整理をします。
戻りたい理由を、4つに仕分ける
「戻りたい」という気持ちは、ひとかたまりに見えて、中身が違います。理由によって、戻る以外の手があるかどうかも変わります。 当てはまるものに丸をつけてみてください。複数に丸がつくのは自然なことです。
1. 収入の波や、お金の不安
入金のタイミングや案件の切れ目で、気持ちが落ち着かない。この場合、固定費の見直しや取引先の分散など、戻る以外に試せることがあります。 備え方は フリーランスの案件が途切れる前に。切れ目に慌てないための備え方 にまとめています。一方で、波そのものが暮らしに合わないと感じるなら、収入が給与の形になる働き方は、有力な選択肢です。 ただし、手取りや社会保険の扱いは人によって異なります。比べるときは、税理士や年金事務所、自治体の窓口で自分の場合を確認してください。
2. 仕事の中身や、成長の実感
受ける仕事が作業中心になり、判断を任される場面が減った、学ぶ機会が少ないと感じる。 これは案件の選び方や、学ぶ時間の取り方を変えることで動く部分と、チームで大きな仕事に関わる環境でないと得にくい部分があります。 後者の場合は戻る意味が出てきますが、会社に入れば成長できると決まっているわけではありません。配属や仕事内容は会社によって違うので、 応募の段階で、具体的にどんな仕事を任されるのかを聞いて確かめます。
3. 暮らしの局面の変化
家族の事情、健康、住まい、介護など、理由が仕事の外にあることもあります。 この場合、「失敗」という物差しはそもそも合っていません。今の暮らしを守るために、働き方を組み替えるという判断です。 心身の不調が続いている場合は、仕事の選択より先に、医療機関や公的な相談窓口に相談してください。
4. 人との関わりや、孤独感
一日誰とも話さない日が続く、仕事の相談相手がいない。これは、同業の仲間との情報交換や、作業場所を変えることで軽くなる場合があります。 同僚のいる環境に戻りたいという気持ちが強いなら、それが戻る理由の中心かもしれません。 ただし、会社にも人間関係の悩みはあります。「人がいる」ことと「相談しやすい」ことは別なので、戻った後の職場の雰囲気は、面談などで聞けるかぎり聞いておきます。
3つの欄を書き出して、判断の材料にする
理由に丸をつけたら、次は紙かメモアプリに、次の三つの欄を作ります。
- 独立した目的: 独立したとき、何を手に入れたかったのか。三つまで書く(例:「時間を自分で決める」「自分で選んだ仕事をする」など)
- いま: それぞれの目的が、今どのくらい満たされているか。◯・△・×で書く
- 戻った後: 正社員に戻った場合、同じ目的がどのくらい満たせそうか。分からなければ「?」と書く
独立前にチェックリストを書いていた方は、その当時の基準を見返してみてください。 独立を考えたら、会社を辞める前に確認しておきたいこと|チェックリスト の「辞める基準」の三行は、この欄の元になります。
書いてみると、「いま」に×が並んでいても、その原因が「やり方」にあるのか、「フリーランスという働き方そのもの」にあるのかで、次の一手が変わります。 やり方なら、案件や取引先を変えることで動きます。働き方そのものなら、戻ることを具体的に考える段階です。
「戻った後」の欄は、?が多くなるはずです。それは普通のことで、今の時点で結論が出せないのは、情報が足りないからです。 この記事で決めてしまうのではなく、?を埋めるために何を調べ、誰に聞くかを決めることを、最初のゴールにしてください。
戻ると変わること、戻っても残るもの
正社員に戻るとき、一般に変わりうることと、残るものを並べます。細かな制度や金額は、ここでは書きません。 見直されることがあるため、最新の内容は公式の窓口で確認してください。
変わりうること
- 収入が、案件ごとの報酬から、会社が決める給与の形になる
- 仕事の進め方や時間の使い方が、会社のルールに沿う形になる
- 副業や兼業ができるかは、会社の就業規則や方針による
- 税金や年金、健康保険の手続きが変わる。開業届を出している場合の廃業の届出、加入している年金・健康保険の切り替え、住民税や確定申告の扱いは、税務署、市区町村、年金事務所、税理士などに自分の場合を確認する
戻っても残るもの
- 担当した仕事の実績と、身につけたスキル
- 取引先や同業の仲間とのつながり
- 仕事を取り、条件を確認し、請求して入金までを自分で回した経験
最後の一つは、書類や面接で語れる材料になるかもしれません。会社員だけの経歴では持ちにくい、独立ならではの経験です。
「戻る」と決める前でも、動ける
「戻ると決めてから動く」と考えると、決める前に疲れてしまいます。話を聞くだけの段階があってよいのです。
- ハローワーク: 国(厚生労働省)が運営する雇用サービス機関で、仕事を探す人に職業相談や職業紹介などを無料で提供している、と厚生労働省のページに記載されています。 職業相談では、自己分析、求人探し、応募書類の作成、面接対策の支援を受けられる、とも案内されています。
- 求職者支援制度: 厚生労働省のページでは、対象の例として、フリーランス・自営業を廃業した方や、フリーランスで働きながら正社員への転職を目指す方が挙げられています。 職業訓練を受けられる制度で、同じページでは、廃業した方は「給付金を受けて訓練を受講する」区分、働きながら正社員を目指す方は「給付金を受けずに訓練を受講する」区分の例として分かれています。収入などの要件があり、自分が対象になるかは、ハローワークで確認が必要です。
- 民間の転職エージェント: 話を聞くことは、登録して転職する約束ではありません。 どのタイプが自分に近いかは タイプ別・エージェント選び方診断(広告を含むページです)で確かめられます。
応募するときの、フリーランス期間の書き方や伝え方は 副業・フリーランス経験を転職エージェントにどう伝えるか に整理しています。ここでは、面接で「なぜ戻るのか」と聞かれたときの考え方だけ触れます。 フリーランスの不満を言い換えて取り繕うより、独立で何を試して、何が分かって、次にどんな環境でどんな仕事をしたいのかを、事実で話すほうが、自分でも説明しやすくなります。 これは民間の転職情報でも同じ趣旨で書かれていますが、採用側の判断は企業によって異なり、通るかどうかは約束できません。
戻る以外の「組み替え」もある
働き方は、フリーランスか正社員かの二択ではありません。いくつか並べてみます。
- 案件の量や単価、取引先を入れ替えて、もう少し続ける。そのとき、期限を自分で決めておく(「◯年◯月までに〜が満たせなければ、応募の準備を始める」)
- 正社員として働きながら、副業を続ける。就業規則と、応募先の副業に対する方針を、内定後の条件確認の段階で聞いておく
- いったん正社員に戻り、働き方を選び直す余地を残す。戻ることを、一方通行と決めつけなくてよい
どれを選んでも、「失敗だったかどうか」は、あとからの見え方で変わります。決める時点でできるのは、その時点の自分の事情と目的に照らして、納得できる選び方をすることです。
今週のチェックリスト
- ☐ 戻りたい理由の4つのうち、当てはまるものに丸をつけた
- ☐ 「独立した目的」を三つまで書き出した
- ☐ 目的ごとに、「いま」と「戻った後」を書き、?の欄に印をつけた
- ☐ ×の原因が、「やり方」か「働き方そのもの」かを分けた
- ☐ 税金・年金・健康保険について、聞く窓口を一つ決めた
- ☐ ハローワークに行く日か、転職エージェントに話を聞く日を決めた
まとめ
戻りたい理由を、お金、仕事の中身、暮らしの局面、人との関わりの四つに仕分け、独立した目的と照らして「いま」と「戻った後」を書き出す。 ?の欄は、調べて聞いて埋めていく。戻る以外の組み替えも、並べて見る。ここまでが、今の時点でできる整理でした。 求人サイトのタブを閉じずに、気になる求人の「仕事内容」の欄を最後まで読んでいる夜は、戻るとも戻らないとも決めていなくても、 決められない理由が「分からない」から「何を聞けば分かるか」に変わっているかもしれません。 独立したとき、いちばん手に入れたかったものは何でしたか。
本記事は一般的な情報提供を目的とした編集部独自のコンテンツです。税金・年金・社会保険の扱い、契約や就業規則の解釈などの個別の判断は、 税理士、社会保険労務士、弁護士、公的な相談窓口などの専門家にご確認ください。 心身の不調がある場合は、医療機関や公的な相談窓口にご相談ください。 働き方や転職の結果について、特定の結果を保証するものではありません。